お寒う御座いますが皆さまお元気でしょうか。代表の市原です。
こちらはよくいただくご質問です。ですが、現時点でそれを実行する予定はありません。
何故かと言いますと、管弦楽団である以上、私たちが提供しているのは音楽だということが前提になります。
これまでの経験上、視覚と聴覚を比べますと、圧倒的に視覚から得られる情報というのは強く、インパクトがあり、心に残りやすいです。9:1くらいの割合で視覚が強いくらいに考えています。
例えば、電車の中でメールにせよゲームにせよ、携帯電話に気を取られている時、車内アナウンスは聞こえているでしょうか。気づいたら乗り過ごしていたという経験は無いでしょうか。聞こえていないのです。本当は聞こえているにも関わらず。
例えば、素敵な人とディナーを楽しんでいる時、お店で流しているBGMがきちんと聞こえているでしょうか。恐らく何か聞こえているとは思えど、どんな曲だったのかは覚えていないのではないでしょうか。
聴覚というのはそれくらいの扱いであり、余程注意深く耳を傾けなければ他のことが優先される。そういう風に思っています。
もう言わんとすることが分かった方も多いと思いますが、クラシック音楽を指揮するにあたり、オーケストラとは何なのか、コンサートとは何なのかを考え続けた結果、遥か昔より、舞台上に大勢いる奏者が似通った黒白の衣装で統一され続けている理由もそこにあるのではないかなという考えに至ったのです。
舞台上が鮮やかな色採々の衣装で埋まるのも確かに視覚的には楽しいかもしれません。ですが、それは音楽を聴いてもらうという目的にとっては必須ではないものであって、それどころか逆に阻害しかねないと思うのです。オーケストラのコンサートである以上、音楽が最大の主役です。
演奏が始まった後、あの人の衣装は、この人の衣装は……と目で追い続けていたら、きっと音楽なんてほとんど頭に入ってこないでしょう。そんなことでは、一体何をしにお客様にホールに来ていただいたのか。
それと同じで、必要性の無い映像を演奏のバックで流すというのは管弦楽の本分から外れるものであり、音楽を聴いていただくという事を真剣に考えれば、そう簡単には実行出来ないのではないかと感じます。
ましてや、ゲームが好きな方たちの前でゲーム画面を流してしまえば、そちらに意識が集中するのは必然ではないでしょうか。そうなってしまえば、何のためのコンサートなのやら分かりません。映像は家でも見ることができます。ですが、生演奏はその時以外には決して聴くことができないのです。一音たりとも二度と聞くことができないものです。それがコンサートの醍醐味なのです。
ですから、演奏中でなければ映像の使用も試みたいと思っていますが、演奏中に演奏内容とリンクしない映像を流すことは今後も無いと思います。
もちろん、全てを否定するのではなく、そういうコンセプトのコンサートであれば、衣装にしても映像にしても良いとは思うのですが、少なくとも何故それをやるのかという必然性は重要であろうと思います。実際、私も過去に全員私服で本番というオーケストラコンサートをやったことがあります。今でもその時の映像を見て、「これはリハーサル風景かな?」と思うことがしばしばです。YouTubeで見ることができますので、ご興味のある方は私までお問い合わせください。
こんな感じで、かなり不定期にはなると思いますが、好評なようでしたら、公演アンケートで寄せられた皆様からの質問などに答えていこうかと思っております。